朝からしとしと降り続く春雨で冷え込む1日となった2月20日(日)に、
BumB東京スポーツ文化館メインアリーナで「第5回JDKF.空手道競技大会」を開催しました。
国内初となる聞こえない(ろう者)・聞こえにくい(難聴者)選手のための
「音声が見える空手道大会」として、審判員の声による合図の指示をライトの点滅でしらせるなど、
きこえない選手が「聞こえないハンディ」を気にせず、
安心して競技に集中できるよう情報保障の行き届いた環境が作られた大会で、
2018年に開催してから今回で5回目となります。
昨年末からオミクロン株の市中感染が全国各地において発生し、
感染者数の急増により「蔓延防止等重点措置」が全国各地に適用されました。
第6波の入り口に立っている状況の中で、本大会も開催が危ぶまれておりましたが、
感染拡大防止ガイドラインの指針に沿って例年以上の感染対策を強化・徹底的に
取り組んだ上で開催しました。
コロナ禍などによる影響を受けて大会を欠場した選手もいましたが、
過去最大参加者数の116名(うち27名がろう者・難聴者、89名が聴者)の選手が出場し、
全空連のルールに従ってそれぞれの競技に臨み、熱気溢れた戦いとなりました。
コロナ感染予防対策のため開会式閉会式は行わず、
3部入れ替え体制および無観客試合の中で合計33のカテゴリーを実施しました。
前回に続き今回も、東京都障害者スポーツ協会主催のパラスポーツチャンネルでの
インターネット・ケーブルTVによる中継ライブが配信されました。
高橋朋子会長と横瀬幸男先生と長谷川由美先生による解説で、
初めて空手を見る方にも分かりやすく、多くの方々に空手道の面白さや魅力を
画面を通して配信いただきました。
配信動画はアーカイブでご覧いただけます。
この大会の特徴としては音声が見える工夫がされていることにあります。
3つの工夫点があり、2面のコートそれぞれ違ったバージョンでの工夫を行いました。
①審判員の合図をライトおよびLEDラインテープで知らせる
組手の競技中、審判員が「ヤメ!」と合図の声を出すのと同時に、
Aコートは赤いライトが、BコートはL E Dライトテープが点滅します。
これによってろう者も聴者もハンディなしに対等に試合に臨むことができます。
②審判員の手話による「勝負始め」
形や組手競技の試合開始「勝負始め」を手話で表現します。
審判員が手話を使うことで、聞こえない選手も安心して競技に臨むことができます。
③形名表示ボードおよびiPadにて形名の掲示
形の競技では、大きな声で明確に、形名を伝えなければならないのですが、
この大会では手話や文字で、自分が演武する形名を申告します。
目に見える情報があることで、ろう者も聴者も対等に情報を保障することができます。
AコートはiPadで表示、Bコートは予め印刷した形名の用紙をボードにて表示しました。
今回、聞こえる選手も手話で形名を申告する風景が多数見られました。
「手話で申告する」ことは、聞こえる・聞こえないに関係なく、本人の選択肢に委ねています。
選手が手話で申告することは、聞こえない選手にとって「声=手話」であり、
まさに「音声が見える空手道大会」の理想が実現された瞬間でもありました。
聞こえない選手も聞こえる選手も形名を手話で申告する。
また、拍手のかわりに、肩の高さで両手をヒラヒラさせる「ジャズハンド」や、
「ありがとう」「おめでとう」の手話が会場全体に伝わりました。
「ジャズハンド」はろう者の文化のひとつで、
拍手も喝采も聞こえないろう者・難聴者にも感動を同時に共有できるため、
誰にも優しく、そして伝わりやすいサインとして、
イギリスなどで聞こえる人たちにも浸透し始めています。
この大会を開催するたびに参加者の皆さまが、
お互いのことを理解し、尊重しあい、支え合う共生社会の実現を
ひしひしと感じ、心より嬉しく思います。
最後に、コロナ禍でほとんどの大会が中止され、
稽古環境が厳しい中、待ちわびた念願の試合出場でこの日に向けて、
稽古を頑張ってきた選手たちの生き生きとした表情を目にすることができ、
この大会を開催して良かったと安堵しました。
久しぶりの試合に緊張したり、久しぶりに会う仲間たちの再会を喜んだり、
勝ち進むことができた嬉しさや負けてしまった悔しさなど、
それぞれの選手がそれぞれの喜怒哀楽を見せてくれました。
表彰式でメダルをもらった子どもたちが嬉しそうに「ありがとう」と手話で応えてくれたり、
ろう者と聴者がお互いにメダルを見せあい、
言葉の壁を乗り越えたコミュニケーションが出来たことこそ、
この大会が成功に収めることが出来たと書中をもってご報告させていただきます。
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